「村田先生、システムがだいぶ出来上がってきました!」
O社長に案内されて、工場内を見学しました。
食品配送業を営むO社長の会社では、
システムが命です。
たったひとつの誤配が、信用を大きく失ってしまいます。
誤配は、一度でも大問題ですが、
それが続いたりしたら…、致命的です。
誤配をしないシステムづくりは
企業存続の最低条件なのです。
いまは、BtoBで事業を行っているO社長。
たとえば、
学校の給食用、企業の社員食堂用の食材配達をしています。
誤配があれば、先方の作業を大きく狂わせてしまうため、
何とかしなければなりません。
たったひとつの食材を送るために、
バイク便を使ってフォローする…、
誤配は、コスト的にも大きな痛手となるため、
財務的な影響も小さくありません。
そこで、
本格的なシステム改善に乗り出したO社長でしたが、
私はO社長に、こんなアドバイスをしました。
「O社長、どうせ改善するなら、
誤配をなくすための合理化だけを考えていては、
もったいないですよ。
O社長のやるべきことは、
合理化ではなく、”革新”です。
事業構造自体を見直して、儲かる方向にもっていくこと。
経済的成果を高めて、高収益に導く方向で改善をすること。
考える視点を、一段上にしていきましょう」
私のアドバイスを受けて、
O社長は、合理化ではなく、革新のための改善を考えました。
そして、
出した答えが、
”BtoC事業への進出”
一般の消費者に販売していくことでした。
この結論に至ったのは、
コロナ禍で外出しないという外部環境の変化も大きな要素でしたが、
企業シンボルを考えていく中で、
「そもそも、私がやりたかったことって何だったっけ…?」
これを真剣に考えたことが大きかったと
O社長は言います。
O社長のやりたかったこと。
それは、
”家族の食卓を豊かにすること”
でした。
このためには、
BtoC事業に進出しなければ実現しないことに、
改めて気がついたのです。
しかし…、
一口にBtoCといっても、
実際に進出するのは大変です。
BtoBであれば、
特定のお客さまであり、ある程度、発注量も見えますが、
BtoCになると、
不特定多数のお客さまであり、発注量も読みづらくなります。
在庫管理が一段と難しくなるわけです。
また、
いまの時代、一般の消費者を相手にするには、
アプリは必須です。
簡単に注文できなければ、
なかなかリピーターにはならないからです。
さらには、
アプリと、在庫管理・発送システムが
連携していなければなりません。
ちょっと考えただけでも、
超えるべきハードルはたくさんあることが分かると思いますが、
O社長は、一つひとつクリアしていき、
冒頭の言葉へとつながったのです。
”そもそも、何がやりたかったのか?”
これは、忙しい毎日の中で、忘れてしまいがちです。
どうしても、目の前の仕事の合理化や、
生産性を考えてしまいがちになりますが、
それでは、経営者としては不十分です。
もちろん、
合理化や生産性向上も大切なことですが、
これをやるのは、経営者の仕事ではない。
経営者は方針を示し、その実施は社員に任せればいいのです。
”経営者の仕事は、合理化ではなく、革新である!”
O社長が、合理化だけを考えていたら、
BtoC事業という、
新たな販売チャネルにチャレンジすることはなかったでしょう。
経営における革新とは、
”経済的成果を高めることを狙いとした、企業の構造的変革”
事業構造自体を、儲かる方向にもっていくこと。
事業構造自体を、高収益に変えることです。
BtoB、BtoCという
2つの大きな柱を手に入れるために動き出したO社長。
もちろん、簡単ではありませんが、
きっと成功を手に入れることでしょう。
なぜなら、
シンボルを考える過程で、
O社長の考えがハッキリしたからです。
考えが明確になれば、
やるべきことが明確になります。
経営のスピードが加速するでしょう。
それだけではなく、
O社長の考えをシンボルに込め、
社内外に認知させていることがあります。
たとえば、社員のセルフイメージ。
食品配送業ではありますが、
運んでいるのは食品ではなく、”幸せ”
社員は、幸せを配達している人なのです。
この想いが、社内外に徹底しているのと、
そうでないのとでは、雲泥の差があります。
たとえば、
あなたのところにやってくる宅配便の人は、
どんなセルフイメージで働いていそうですか…?
ただ荷物を運んでいる人なのか…?
それとも、
幸せを運んでいる人なのか…?
この違いは、
配達員の態度ですぐに分かりますよね。
大切なことなので、
最後にもう一度繰り返します。
”経営者の仕事は、合理化ではなく、革新である!”
経営者は、ひとつ上の視点から考えていきましょう。
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