72通目:いずれ行き詰る、”なんとなく昇給”

 
「物価が上がってますからね…」
ある中小企業経営者の集まりに参加した際に
こんな言葉があちこちで飛んでいました。

 
早いもので、2023年も4月に突入。
給与改定の話題になると
枕詞のように、口々に冒頭の言葉を使っていました。

 
直近のデータでは、
消費者物価指数の前年比は、+3.1%(2月)

これに対して、
給与の伸びは、前年比+0.8%(1月)

わずかながら給与が伸びているとはいえ、
物価上昇により、実質給与は目減り…。

 
直近ではなく、
月を合わせた1月のデータでみると、
消費者物価指数は+4.2%となり、
単純計算ですが、3.4%給与が目減りしているわけです。

 
そんな中で迎える4月の給与改定。

”昇給するか否か”

”昇給するならどれぐらい…?”

ウィズコロナ・アフターコロナで先行き不透明ないま、
厳しい選択を迫られた中小企業経営者も
多いのではないかと思います。

 
これまで私が関わってきた中小企業経営者は、

「可能な限り、給与は払ってあげたい」

そんな経営者が多かったような気がします。

 
なるべく安く雇う…、

搾取の精神を持った経営者では
やはり長続きしません。

 
”感情と勘定”

「物価が上がってますからね…」

社員のために給与を上げてあげたい…、

でも、

そのためには先立つものが…、

経営者の葛藤が、この言葉には表れているのです。

 
では、

そもそも論として、
定期昇給はなぜ出来るのか?

 
右肩上がりの
高度経済成長期であれば、
何もしなくても定期昇給が出来たわけですが、
いまは、そんな時代ではありません。

 
”定期昇給するための条件”

それは言うまでもなく、
 
定期昇給 < 付加価値

社員1人当たりの付加価値額が、
定期昇給額を上回ることです。

 
「社員の給与を上げてあげたい」

そんな感情だけで昇給していたら、
間違いなく経営は行き詰ります。

 
つまり、

毎年社員の待遇改善を行いたいのであれば、
付加価値、いわゆる労働生産性を測定し、
上げていかなければならないのです。

 
定期昇給には、

【経営者の感情】だけでなく、

【労働生産性という勘定】

この2つの【かんじょう】が重要ということです。

 
とはいえ…、

これも、

言うのは簡単、実行するのは難しいことのひとつ。

 
まず、
労働生産性を測定することが
簡単ではありません。

 
シンプルに考えれば、

売上高-売上原価=粗利益

粗利益を人数で割ることで、
1人あたりの算出が可能です。

 
しかしながら、

会社単位で算出したところで
あまり意味がありません。

会社内部の部署ごとで
労働生産性は変わるからです。

 
また、

商品・サービスの値上げをすれば、
必然的に労働生産性は上がりますが、
これをそのまま鵜呑みにしていいのか…?
という問題点もあります。

 
もっと正しく労働生産性を測定するには、
物量による測定をする。

生産量・販売量・処理速度の向上など、
本当の意味での労働生産性を測定するためには、
金額以外の考え方が必要となります。

労働生産性の測定だけでも
考えることが山ほどあるわけです。

 
ということで、

定期昇給には、

”感情と勘定”

この2つを考慮することが大切です。

 
なんとなく…、

昇給を決めていてはいけません。

 
”昇給するための前提は、付加価値の向上”

たとえば、

あなたの会社では、

”1%の昇給のためには、どれぐらいの付加価値向上が必要ですか?”

計算したことがなければ、一度計算してみてください。

 
あとは、

上記の考え方を取り入れる場合には、
もうひとつ考えなければならないことがあります。

 
それが、

”経営者と社員のギャップ”

社員からすれば、
定期昇給は当たり前と思っています。
それは、ある意味仕方がないことです。

 
なぜなら、

”情報の非対称性”

すべての数字を知ることが出来る経営者と、
知ることが出来ない社員では
そもそも持っている情報量が違うからです。

「今年は昇給するのが厳しんだよな…」

経営者がそう言ったところで、
社員には判断ができません。

 
だったら、社員に数字を公開すれば…、

数字を公開することを、
OBM(Open Book Management:オープンブック・マネジメント)と言いますが、
これはこれで、簡単ではありません。

業績がいいときならまだしも、
悪いときに公開すれば
社員の離脱が進み、さらなる業績悪化を招く可能性もあるからです。

また、

一度公開してしまったら、
途中でやめることは、ほぼ不可能です。
途中でやめたときには…、社員には不信感しか残りません。

 
ということで、

定期昇給ひとつとっても、
経営戦略が必要なのです。

・なんとなく昇給ではなく、付加価値との比較を考える。

・部署ごとに付加価値を計算する。

・1%の昇給で、どのぐらいの付加価値向上が必要なのかを試算する。

・付加価値向上のために、何をやるべきかを考える。

・経営者と社員のギャップをなくすためには、OBMを検討する。

シンボリック経営®では、
これらもしっかりと考えていきます。

 
あなたの会社では、
昇給をどのように考えていますか?

 
そういえば…、

スーパーのイオンが、
パートさんの時給を、平均で約70円上げると発表しましたが、
これは、人件費300億円以上増やす要因になるとのこと!

この分の付加価値を、どう上げていくのか…?
要注目ですね。

 
 
 
 

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