155通目:やりがい搾取では、象徴は育たない。

 
「行き過ぎた経費削減で、乾いたぞうきんになっています」

「自腹接待の話もいくつかあります」

伊藤忠商事が開いた、岡藤正広会長CEOと社員の対話会で出た
社員の言葉です。

 
 
日経新聞の記事によると、
伊藤忠では、2024年11月の経営幹部会で
交際費、交通費、会議費の3Kを中心に、
経費削減の徹底が厳命されたとのこと。

 
  
ちょっと話は逸れますが、

一般的に3Kといえば、
交際費、交通費、広告費ですが、
伊藤忠では、広告費ではなく、会議費なんですね。

 
伊藤忠の3Kは、

 
 
”社員の働き方への問いかけ”

 
 
という意味もあるのかもしれません。

 
 
 
話を元に戻します。

  
  
3K削減徹底について、
社員から不満が出た伊藤忠。

 
なぜなら、

 
”業績は好調だから”

 
2025年3月期の連結純利益は、
前期比10%増の8,802億円。

一般的に考えて3K削減に動くのは、
業績低迷時ですから、社員の不満も理解は出来ます。

 
 
この不満に対して、
岡藤会長CEOは言います。

 
「お金の問題とちゃうんや。
経営者になるには、”それはダメ、おかしい”と思う
感性を磨かなアカン」

 
1970年代と、90年代に大きな危機を経験している伊藤忠。

この危機の原因をひと言で言えば、

 
 
”調子に乗った”

 
 
「ちょっと調子が良くなると、進軍ラッパを鳴らして
”それ行け、やれ行け”となるのが伊藤忠の欠点」

 
そう話す岡藤会長CEOは、
その気風が今も残っていると感じているようで、

同じ過ちを繰り返さないよう、
社内の空気の引き締めのために、
3K削減徹底の厳命をしたようです。

 
 
”社内の慢心は、コスト意識に現れる”

 
  
破綻したJALが、まさにそうでしたよね。

過去の好調のときの感覚のまま、
高コスト体質を続けた結果の破綻。

再建を引き受けた稲盛和夫さんは、
1円単位でのコスト意識づけを行っていましたよね。

 
 
そして、
 
 
今回の岡藤会長CEOの3K削減徹底の厳命には、
もうひとつのキーワードがありました。

 
それが、

 
 
”経営者視点”

 
 
「社員全員に経営者として立派に育ってもらいたい。
それにはまず低重心経営を身につけることや」

 
岡藤会長CEOがいう低重心経営とは、
目線を低く保ち、小さな無駄や違和感を見逃さない姿勢
経営には不可欠ということなんですが…、

ここで注意点があります。

 
 
中小企業でも、

 
「経営者視点で働いてもらいたい」

 
そんな話をするときがありますが、
それを聞いたとき、社員はどう思っていると思いますか・・・?

 
 
「だったら、それに見合う給料をくれよ!」

 
 
要求だけが先走り、
報酬という“象徴”が伴わなければ、
社員の心は次第に離れていきます。
 
 
いわゆる、

 
”やりがい搾取”

 
ですよね。

 
 
では、

 
 
今回の伊藤忠はどうだったかといえば…、

 
3K削減徹底の厳命をしたあと、

 
”平均年収の1割引き上げを決めた”

 
経営者視点で仕事に取り組ませる代わりに
報酬で報いているのです。

 
 
もちろん、

 
 
上場企業と、中小企業とでは、様々な状況が違います。

同じようなレベルで、報酬で報いることは難しいかもしれませんが、
考え方自体は変わりません。
 
 
それが、

 
”社員に与える幸せ”

 
についてです。

 
 
私たち経営者が社員に与えられる幸せは、

 
1.働く喜び

2.経済的喜び

 
この2つです。

 
 
やりがいの搾取は、
この2つとも奪うということを忘れてはいけません。

あなたが、独立前の社員だった頃を思い出せば、
容易に想像がつきますよね。

 
 
ということで、

 
 
岡藤会長CEOのように、
あなたの経営哲学を社員たちに伝えていきましょう。

 
そのときのポイントは、”低重心経営”のような
分かりやすく、覚えやすいシンボリックな表現をすること。
 
 
そして、

 
 
何かを要求したのであれば、
何らかの形で、それに報いるという考え方を持つこと。

 
やりがい搾取では、
シンボリック経営®が目指している
長く続く成功、長く愛される会社は、絶対につくれません。
 

 
 
 
 

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