4通目:借り物は、所詮借り物。世界でただひとつのオリジナルには敵わない。

 
「先生、さようなら!」

子どもたちが、元気に挨拶をして帰っていくのを
笑顔で手を振りながら見送るT社長。

 
見送り終わると、
先程の笑顔はどこへやら…、

真剣な表情に切り替わり、
ひとつ、ふたつ、スタッフに指示を出した後、

「村田先生、お待たせしました。こちらへどうぞ」

ただならぬ空気を感じながら、
奥の応接室へと案内されました。

 
T社長は、
ある地域で学習塾を2店舗経営。

 
口コミサイトを見てみると、
親身になって指導してくれると
評判の良い学習塾のようです。

そんな評判の良い
学習塾経営者からのご相談ということでしたが、

聞かなくても、
私には、ある程度、
その相談内容が分かっていました。

 
応接室に入り、ソファーに座るT社長と私。

天気の話など、差し障りのない話をしていると

”トントン”

スタッフの人が、
コーヒーを持ってきてくれました。

 
砂糖のスティックを切り、
コーヒーに入れ、
ティースプーンでかき混ぜながら話し始めるT社長。

 
「いや~、実は本部の方針と合わなくなってきて、
独立を考えているんですよ」

 
私には、相談内容が分かっていたと言いましたが、
T社長が経営する学習塾は、

”フランチャイズ”

だったのです。

 
本部が、ビジネスに関するノウハウを
フランチャイズオーナーに提供し、

フランチャイズオーナーは、
それに対するロイヤリティを本部に支払う。

この仕組みは、
コンビニの普及とともに、一気に広まりました。

 
ビジネス初心者などには
とても有難いシステムです。

ですが…、

ここ数年、このシステムには
いろいろと問題が起こっていますよね。

 
コンビニで言えば、

時短営業の可否や、
賞味期限切れ間近の値引販売の可否など、

オーナー側と、本部側とで、
意見の対立が起こっています。

 
オーナーと言えども、

営業時間も決められなければ、
値段も決められない。

これで本当にオーナーと言えるのか…。

 
T社長が加盟する
学習塾のフランチャイズでも
同じようなことが起こっていたのです。

カリキュラムは決められない、
テキストも決まったものを使う、
値段も決められないし、
その塾だけの特別講座も出来ない。

T社長は言います。

「本部には申請しているんですが、なかなか許可が下りず、
何も特色を出せないんですよ」

 
T社長の話を一通り伺い、
私は言いました。

「とても精力的に活動されていますね。
もっと良くしたいという気持ちが伝わってきました。

しかしながら、

フランチャイズである以上、
T社長がやりたいことは出来ないでしょうね。
出来たとしても、かなりの時間を要するでしょう。

フランチャイズは、
ノウハウの提供など、
サポートしてもらえる安心感を得る代わりに、
生殺与奪権を本部に握られることでもあります。

フランチャイズは決して悪いシステムではありませんが、
T社長には合わなかったのかもしれませんね。

もし、
本当に自由にやりたいと思うのであれば、
独立するしかありません。

契約の問題はもちろんですが、
これまでの恩もあるでしょう。

不義理をせずに、
なるべくきれいに独立できる道を探っていきましょう」

 
あれから数ヶ月…、

 
本部と交渉の末、
2店舗の権利を新たなフランチャイズオーナーに売却し、

T社長は、
別の新たな地域で学習塾をオープンする、

ということで話が収まりそうです。

 
もちろん、
オープンするのは、”自分の看板”
フランチャイズではありません。

 
T社長を見ていて…、

つくづく、
世の中は、”正負の法則”であると感じました。

正負の法則とは、

”何かを手に入れれば、何かを失う”

世の中の法則のことです。

 
T社長は、
自分のやりたいことが出来る喜びと引き換えに、
いままで育ててきた2店舗を手放した。

この決断をするのは容易ではなかったでしょう。

まさに、”苦渋の決断”

それだけ、T社長の本気度が伝わり、
私自身も気合が入りました。

 
いまは、
その学習塾のシンボリックをつくるために、
思考の整理を行っている段階です。

 
「世界でただひとつのオリジナルシンボルが出来ると思うと、
ワクワクしますよ!」

そう語るT社長は、
きっと、素晴らしいシンボリックを完成させ、
失ったもの以上の成果を手に入れるでしょう。

 
ということで、

経営に活かすシンボリックをつくるためには、

”生殺与奪権を自分で握っていること”

これが絶対条件です。

 
なぜなら、

他人に握られている状態では、
たとえつくったとしても、中途半端なものになるからです。
そこに本物はありません。

自分の看板を背負う覚悟がある経営者にだけ、
あなたの会社を象徴するシンボリックが手に入るのです。

 

 

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