14通目:失う覚悟がなければ、会社は変わらない。

 
コロナ禍となり、変わったことのひとつが、
 
”歩くこと”
 
2駅・3駅なら、歩く。
ほぼ眠っていたであろう…スマホの万歩計が、
いまではフル稼働しています。

 
やはり、”健康なくして、良い経営なし”

体のことを考えるのも、
経営者としての、ひとつの大切な仕事。

 
そんなことを考えながら、
スタスタ歩いて、
次の打ち合わせ場所に向かっているとき、

(((ブルブル…ブルブル…)))

上着のポケットが震えます。

 
スマホを取り出すと、画面にはG社長の名前が。
歩きながら、応答ボタンを押します。

「もしもし、G社長、いつもお世話になっておりま…」

スマホの向こうのG社長は、こちらが話し終わる前に、 

「あぁ~、村田先生すみません。いま大丈夫ですか?」

なんだか慌てた様子です。

 
「どうされましたか?
いま、別のお客さまのところに向かってまして、
歩きながらになってしまいますが、よろしいですか」

歩きながらG社長の話を聞いた私はひと言、
 
だから言ったじゃないですか。予定通りですよ。
次の打ち合わせが終わったら、電話しますね。
2時間後ぐらいです」

 
慌てるG社長が、これ以上慌てないように、
あえて淡々と伝え、電話を切りました。

 
果たして、何があったのか?

それは…、

”中心メンバーのひとりが、会社を辞めると言い出したのです”

 
G社長が慌てるのも分かります。
そのメンバーは、G社長にとって、右腕のような存在。
とても頼りにしていたのです。

 
社長というのは、社員が辞めると、

”自分自身を否定された”

そう感じるものです。

 
いくら平静を装っていても、
心の中では、泣いているのです。

  
G社長の場合は、それが右腕。
言い方を変えれば、ナンバー2ですからね。

周りに誰もいなければ、
叫びたい気持ちだったことでしょう。

 
しかし、

このことは、ある意味では、”想定内”

シンボリック経営を導入する前の個別相談で、
次のように伝えていたのです。

 
「シンボリック経営に限らずですが、
会社を変えようとして、何か新しいことを始めると、
辞める人が出てきます。

辞めないまでも、反発する人。
いわゆる、抵抗勢力が出てきます。
人間というのは、変化を恐れる生き物なんですよね。

社長がいくら、
会社のため、社員のためにやっていると思っていても
通じないことがあるんです。 
それは覚悟してください」

 
この抵抗勢力には、2つのタイプがあります。

ひとつは、そもそも変わる気がない人。
もうひとつは、不満がある人です。

残念ながら、
そもそも変わる気がない人は、
何をやっても変わりません。
これは採用の間違いです。
採ってはいけない人を、採ってしまった。

でも、不満がある人。
この人たちは、何とかなる人たちです。
不満の種を取り除いてあげると、
抵抗勢力だった人が、一番の理解者に変わり、
積極的になることがあります」

 
「その不満は、仕事の不満とは限りません。
家庭の問題が原因かもしれません。

仕事と家庭は密接に結びついてますからね。
家庭の不満を、社長にぶつける…なんてことも
あるんですよね。

社長は…ホントに辛いのです…

 
こんな話をしていたのです。

打ち合わせが終わり、G社長に電話を掛けます。

 
「待ってました!」
そう言わんばかり、
早押しクイズのチャンピオンの如く
ワンコールも終わらないうちに電話に出るG社長。

 
事前相談で話したことを、もう一度説明すると、

「あぁ…、そんなこと言ってましたね…」

おいっ! そうツッコミを入れたい気持ちを抑え、

「G社長、そのNさん(ナンバー2)は、
”そもそも変わる気がない人”ではないですよね。

おそらくなんらかの不満があるんだと思います。
それは怒りかもしれません。
一度腹を割って話してみてください

そのときには、聞き役に徹してくださいね。
耳の痛いこと、イヤなことを聞くかもしれませんが、
決してキレちゃダメですよ。

そして、もうひとつ。

”やってくれなきゃ、みんなが困るんだよ”

とは絶対に言わないでくださいね」

 
「みんなが困る…と言うと…、必ず、”誰ですか!”
そうなりますから。

いまは、ただでさえ、職場の空気は悪いはずです。
そのうえ、”自分の周りは敵だらけ”
そう思わせてしまったら、ますます空気が悪くなります。

だから、
”やってくれなきゃ、オレが困るんだよ”
言うなら、そう言ってくださいね」

 
そんなアドバイスをして
電話を切りました。

 
その後…、

早速、G社長とNさんは、
腹を割って話したそうです。

 
一度の話し合いで丸く収まった…、

そんなことはなく…、

いまも話し合いは続いています。

 
しかし、
G社長からは、こんな報告がありました。

 
「Nからは、こう言われました。

”いまでさえ業務量が多いのに、
これ以上、オレに何をやらせようっていうんだ!”

そんな怒りを持っていたようです。

Nを頼りにするあまり、業務量が偏っていたのかもしれません。
まだまだ抵抗勢力ですが、少しずつ軟化してきている…
そんな感じはするので、大丈夫だと思います」

 
いつの時代も、変革には抵抗勢力がつきもの。

抵抗勢力を辞めさせることは簡単ですが、
その前に、その人をよく観察してみてください。

そもそも変わる気がないのか、
不満や怒りがあるのか、

 
後者の場合は、対応を焦らないことです。

なぜなら、
対応次第で、
会社の未来を変える人材になるからです。

 
ということで、  

変革には、失う覚悟が必要。
その覚悟の先に、会社は生まれ変わるのです。

 
ここで改めて…、

”経営者は辛い…”

でも、

”その辛さ以上の楽しさと、やりがいがある!”

 
私は、
そのためのひとつの手段が、
シンボリック経営®だと信じています。

 
”シンボルが戦略的になれば、
経営自体が戦略的になる”

社長の考えをシンボルで浸透させ、経営を変える。

社長と二人三脚で、
会社を変えていくのが、私の仕事です。

 

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