10通目:量がやがて、質に変わる。社長の理想とする組織をつくるためにやるべきこと。

 
「うちの社員…、誰ひとり答えられないんだよ…」

ビールジョッキを片手に、
肩を落として、ボソッと話すF社長。

 
経営者が集まる勉強会。
久しぶりのリアル会場での勉強会ということもあり、
自然と二次会となったのです。

 
果たして、
F社長の社員たちは、
何を答えられなかったのか…?

 
いま現在の会社の業績か…?

それとも、

重要な経営課題に対するアイデアか…?

 
そんなことを考えていると、
ビールを一気に飲み干したF社長が、

”ガンッ!”

ビールジョッキをテーブルに置き、
その答えを話し始めました。

 
「いや~、緊急事態宣言も明けたし、
この間、社員たち数人と飲みに行ったんだよ。
そのときに、簡単なクイズを出したわけ。
ホント、簡単なクイズ」

 
そのクイズとは…、

”我が社の経営理念は?”

「うちの会社の経営理念って何だったっけ?」

 
F社長としては、
アフターコロナに向けて、
いま一度、企業の方向性を確認したくて
クイズを出したようなのですが、
誰も答えられずに、ヘンな空気になってしまったとのこと。

 
「ホント、ガッカリしたよ…」

そう話すF社長に、
私は質問しました。

 
「経営理念の浸透のために、どんなことをやってきたんですか?」

 
F社長は、一瞬顔色を変えたように見えましたが、

「それは…、入社の時にも説明しているし、
壁にも貼ってある。毎日、目に入るようにしているよ」

 
気が置けない経営者仲間ということもあり、
私はちょっといじわるな質問をしました。

 
「F社長が、独立前に働いていた会社の経営理念は何でしたか?」

 
「え…、前の会社…、経営理念…、何だったっけな…?」

 
私はニヤッとして、

「ね!、そういうことですよ」

誤解を恐れずに言えば、
経営理念に関心があるのは、”社長だけ”

そもそも、社員たちは、関心がないのです。

 
社員たちの最大の関心事は、

”雇用の継続と、給与の保証”
 
自分の身の安全が第一。

 
これは、
社員が悪いとか、悪くないとかの問題ではなく、
そうなるのが当たり前なのです。

 
就活面接で、

「御社の経営理念に共感しまして…」

いくら、そんなことを言っていたとしても、
入社した途端に忘れてしまう人も多いのが現実。
 
 
つまり、

経営理念を壁に貼って、目に入るようにしたところで、

”そもそも関心のないものは、目に入らない”

 
たとえば、

みなさんは、駅の自動改札機には
一台一台、番号が付いているのを知っていましたか?

毎日毎日通っている自動改札機ですが、
知らない人も多いのではないでしょうか?
自動改札機の下の方に番号が付いています。

 
でも、
次に通るときには、きっと目に入ってくることでしょう。
なぜなら、”関心を持ったから”

 
関心を持つことで、
いままで目に入らなかったものも、
自然と目に入ってくるようになるのです。

 
これは、経営理念も同じです。
まずは、関心を持たせる環境づくりが必要なのです。

 
たとえば、

☑名刺に経営理念を入れる。

☑会議をするときには、経営理念の確認から入る。

☑社内文書のフッターには、経営理念を入れる。

☑自己紹介をするときには、経営理念+会社名から始める。

☑経営理念の勉強会を開く。

☑経営理念大賞など、頑張った社員の表彰式を行う。

☑経営理念を言わないと、給料が貰えない。

☑経営理念に基づき、人事評価を行う。

☑会社の電話に出るときには、経営理念+会社名で出る。

 
などなど、

冗談みたいなこともありますが、
まずは、触れる量を増やすことを考えること。
その量が、やがて、質に転換していくのです。

 
言うまでもありませんが、
経営理念は、覚えることが目的ではなく、
それに基づいて行動することが目的です。


そのためには、まずは、量をこなすこと。
無意識に動けるようになる、スポーツの練習と同じ。
経営理念の浸透には、相当な努力が必要なのです。


つまり、

先のF社長の場合は、
経営理念が浸透しなかったのではなく、

”浸透させる努力が足りなかった”

ということ。

 
そして、

経営理念の浸透には、
キャラクターやシンボルを使うシンボリック経営も有効です。

 
文字から感じるものと、
造形から感じるもの。

 
たとえば、Apple。

Appleには、

”明確な経営理念はない”

とされていますが、

Appleの社員たちは、

あのAppleマークから、何かを感じ取っているはずです。

そうでなければ、
世界を変える、革新的な商品を発売し続けることは
出来ないでしょう。

社長のやりたいことを、シンボルで可視化する、
これは、想像以上に大きな力になるのです。

 
ということで、

社長の関心事と、社員の関心事は、
根本的に違う。

このことをよく理解して、
企業経営を行っていかなければなりません。

 
「自分が社員だったとき…、どんなことを考えていたかな…?」

ちょっと振り返ってみましょう。
ここに、理想の組織をつくるヒントが隠されているはずです。

 

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