26通目:目標達成の秘訣は、定めた目標に対して、全員が完全納得していること。

B!

 
「今月で、第3クールが終わりますが、
今期の目標達成は、ちょっと厳しいかもしれません…」
手に持った資料をめくりながら、ため息をつくF社長。

 
私が関わらせて頂くようになったのが、
今期がスタートして間もなくのこと。
そのときには、既に今期の目標が定められていました。

 
数字目標とともに、
ビジョン・ミッション・行動計画などなど…、
A4サイズの冊子にまとめられ、
とても素晴らしいものでした。

 
「手帳型もいいんですが、私はこのサイズが好きなんですよ」

何か気づきがあれば、
カバンから取り出してメモするF社長。
A4サイズの紙面には、ビッシリと書き込んでありました。

これでは…、

手帳型だと難しいのも納得です。

 
その存在は、F社長の会社にとっては、
まさに、”憲法そのもの”

「これに従っていくのである!」

強い意志を感じました。

 
しかし、

それと同時に思うことがありました。

 
それは、

”そう思っているのは、F社長だけなのでは…?”

ということ。

 
この冊子は、
全社員に配られているはずですが、
F社長以外、使っているのを見たことがないのです。

会社の憲法というよりは、

”F社長個人の憲法になっている…”

そんな気がしていたのです。

 
試しに、休憩時間に、
経理のMさんに聞いてみました。

「Mさん、この冊子持ってますか?」

すると、Mさんは、

「あ、ありますよ」

そういって、机の引き出しから取り出しました。

 
その取り出したものは…、

第3クールが終わろうとしているとは思えないほど…、

きれいでした…。

 
しかも、取り出した冊子を開くと…、

メリメリメリ…、

くっついたページとページが剥がれる音…。

「いま、初めて開いたでしょ!」
思わずツッコミを入れたくなるものでした。

 
これだと…、

目標達成は難しいですよね。

 
なぜなら、

目標を達成できない原因の第1位は、

”目標自体を忘れてしまうから”

忘れる以前に…、

見ていないのであれば、
達成できるはずがありません。

 
もちろん、
 
F社長の口頭による説明はあったと思いますが、
人間は忘れる生き物。

関心が低ければ低いほど、
忘れるスピードは加速していきます。 

 
おそらくですが、

経理のMさんにとっては、
目標達成は、どこか他人事なんだと思います。

「営業の人たちが頑張って、売って来てください」

目標というのは、営業の人たちのものであって
経理には関係ない。

この考えが、
机の引き出しに眠っていた冊子に現れていると思うのです。

 
そして、もうひとつ思うことが…、

それは、

”定めた目標に対して、完全納得しているかどうか?”

ということ。

 
今回定めた目標…、

具体的には言えませんが、
私からすると、到底及ばない数字なのです。

言葉を選ばずに言えば、

”絵に描いた餅”

私は、F社長に確認してみました。

「F社長、この定めた目標は、頑張れば実現できると思っていますか?
完全に納得してつくったものですか?」

 
すると…、

しばらくの沈黙のあと…、

しばらく…といっても、5分ぐらいはあったと思います。

コンサルティングの現場では、この沈黙も大切なのです。
沈黙が途切れるのを待つ…、あの独特の空気感はツラいですが、
このとき、社長の頭はフル回転しています。
いろいろ考えているのです。

ここで口を挟んだりすると、思考が止まってしまったり、
答えを急がせたりしてしまうんですね。

 
ある程度考えがまとまったのか、
F社長が口を開きます。 

「さすが、村田先生ですね。鋭いです。
実は、最初から目標達成は出来ないだろうな…と思っていました。

”企業はこうあらねばならない”
この想いが強すぎて、カッコつけた目標になっていたと思います。
それが従業員たちにも伝わっていたんでしょうね。

私以外、冊子を使っていないことも気づいていました。
「どうせ…無理だろう…」
冷めた気持ちにさせてしまっていたのだと思います。

いつの間にか、この冊子をつくること自体が目的になっていて、
企業を成長させ、お客さまや従業員、取引先に喜んでもらうため…
という本来の目的を忘れていました。

忘れていたというか…何とかしなければならないとは
ずっと思っていました。

シンボリック経営®をやってみたいと思ったのも、
そこに経営の突破口があると感じたからです

 
ということで、

第4クールに入る今、
今期の目標に出来る限り近づくように動きながら、
来期の目標作成に入りました。

目標というのは難しいもので、
簡単でもいけないし、難し過ぎてもいけない。

だからといって、
従業員に任せると、必ず低い目標になる。

なぜなら、
身の安全を第一に考えるからです。

高い目標を設定して達成できずに評価が下がるより、
安パイの目標で、確実にクリアする方を選ぶ。

 
つまり、

目標というのは、”いつでもトップダウン”
経営者自らが決める必要があるわけです。

そして、

その経営者が定めた目標を、全従業員の目標に変える。
これが出来るかどうかです。

 
そのためには、
社長の想いを語る、
社長の想いをカタチにすることです。

「私たちがつくる、商品・サービスには、こんな未来がある!」
「私たちの会社には、こんな可能性がある!」
「世界平和は無理でも、私たちに関わる人たちを、必ず幸せに出来る!」

こんな働く喜びだけでなく、

「目標を達成したら、ボーナスを弾むぞ!」
「目標を達成したら、みんなでハワイに行くぞ!」
「目標を達成したら、三ツ星レストレランで祝賀会だ!」

そんな経済的な喜びも必要です。

 
これらを都度都度語っていくうちに、
いつの間にか、
社長の目標が、社員自らの目標にすり替わっていくから不思議です。

 
そして、

それらの想いに駄目を押すのが、”シンボリック”

自分たちを象徴するものがカタチになると、
それが誇りやプライドに変わるのです。

 
F社長は今、
寝る間を惜しんで考えています。

寝てください…とお願いしているのですが、

「いや~、考えるのがツラくて、楽しいんですよ」

オクシモロン的なことを言っているF社長は
きっと素晴らしい計画をつくることでしょう。

 
さて、

あなたの会社には、
あなたの定めた目標に完全納得している人はいますか? 

納得しているからこそ、力を発揮できる。
人間は、ある意味、単純でもあるのです。

 

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